教師のキャリアの節目を全部まとめました|採用から退職まで、書く書類と時期の地図
45歳の頃、ふと気づいたことがあります。
(退職するまでの残り時間は、あと15年しかない。)
それまでの私は、人生の大きな問題を、よく考えずに決めてきました。
今ふり返ると、失敗の連続です。
でも、教師のキャリアには、誰にでも同じようにやってくる「節目」があります。
しかも、その節目ごとに書く書類と、出す時期がだいたい決まっている。
先に地図を持っている人と、来てから慌てる人。
差がつかないはずがありませんよね。
この記事では、採用から退職までの節目を、書く書類と時期といっしょに1本にまとめました。
〇この記事でわかること
✔ 教師のキャリアの7つの節目と、それぞれで書く書類
✔ 節目ごとの「いつ考え始めればいいか」の目安
✔ ここ数年で変わった制度(主務教諭・定年の引上げなど)が、あなたのどこに関わるか
〇目次
① そもそも、教師のキャリアとは何か
② 節目1 採用と1年目
③ 節目2 毎年まわってくる書類
④ 節目3 異動
⑤ 節目4 中堅になる・職が変わる
⑥ 節目5 学校の外で活動する
⑦ 節目6 休む・家族と生きる
⑧ 節目7 定年・転職・退職
⑨ 地図を持つ人と、持たない人の書き方
⑩ 今日からできること
〇そもそも、教師のキャリアとは何か
教師にとって、「キャリア」とは何でしょうか?
管理職になるかどうか。
同僚から一目置かれる実績を上げるかどうか。
私はそうは思いません。
教師にとってのキャリアとは、仕事も私生活も含めた、人生そのものです。
だから、節目は学校の中だけにあるのではありません。
結婚、出産、子育て、親の介護。
そうしたライフイベントが、異動や校務の節目と同じ年に重なってやってくる。
子どもたちの人生に伴走してばかりいると、自分の人生を忘れてしまいかねません。
地図が必要なのは、そのためです。
〇節目1 採用と1年目
公立学校の教諭は、採用からの1年間が「条件付採用」の期間です。
一般の地方公務員は6か月ですが、教員は教育公務員特例法で1年とされています。
同じ1年間、初任者研修があります。
学校の中で指導教員がつき、校外の研修にも出る。
1年目は、とにかく忙しい。
この時期に書くもの:
✔ 初任者研修の記録や報告(様式は自治体ごと)
✔ 1年目から始まる、人事評価の自己申告
ひとつだけ伝えたいのは、1年目は「正解の教え方」を探さなくていい、ということです。
人は、自分が教わったように人に教えます。
恩師のやり方をなぞるより、自分が楽しめるやり方を試して、生徒の反応を見ながら直していけばいい。
〇節目2 毎年まわってくる書類
1年目が終わっても、毎年まわってくる書類があります。
✔ 自己申告・目標管理シート(年度の初めに目標を書き、年度末にふり返る)
✔ 人事評価の面談(当初・中間・最終の3回が多い)
✔ 研修の記録
研修の記録は、ここ数年で変わったところです。
教員免許の更新制は2022年7月に廃止されました。
代わりに、2023年4月から、任命権者(教育委員会など)が先生一人ひとりの研修の記録を作り、それをもとに指導や助言をする仕組みが始まっています。
毎年書くのに、書き方を誰にも教わっていない。
多くの先生がそうだと思います。
自己申告のシートは、面談のときに管理職が読む書類です。
「学校の目標」の欄を埋めて終わりにするのは、少しもったいない。
〇節目3 異動
公立学校の先生には、数年ごとに異動があります。
何年で動くのか、どこまで希望が通るのかは、自治体によってかなり違います。
この時期に書くもの:
✔ 異動希望調書(自己申告書と呼ぶ自治体もある)
提出は秋から冬にかけてという自治体が多く、内示は年度末です。
異動を「組織の都合で振り回されるもの」と考えると、どうしても受け身になります。
でも、異動は受け身で従うものではなく、戦略的に活用するものです。
どんなキャリアを築きたいかを先に決めておく。
そして、子どもの入学や親の介護など、ライフイベントと異動の時期が重なることも見越しておく。
辞令が出てから考えるのでは、遅いんです。
〇節目4 中堅になる・職が変わる
経験を積むと、中堅教諭等資質向上研修があります。
いつ受けるかは、自治体が決めます。
そして、2026年4月から、学校に「主務教諭」という新しい職ができました。
2025年6月に成立した給特法などの改正で、学校教育法に置かれた職です。
教諭と主幹教諭のあいだで、校務の調整などを担う職と位置づけられています。
ただし、置くかどうか、どんな名前で呼ぶか、どうやって選ぶかは、自治体によって違います。
東京都のように、もともとあった「主任教諭」をそのまま主務教諭に位置づけたところもあります。
この時期に考えること:
✔ 主任・主務教諭・主幹教諭・指導教諭のどれを目指すのか、目指さないのか
✔ 管理職選考を受けるかどうか
ここで、ひとつ私の考えを書いておきます。
若い頃なら、がむしゃらにトップを目指せばいい。
中堅になったら、若手をトップにする。
ベテランになったら、トップとともに働く。
キャリアとは、管理職になるかどうかではありません。
理想は、あなたがいなくても回る職場をつくることです。
〇節目5 学校の外で活動する
本を書く。講演をする。オンラインで教える。
学校の外で活動したくなったら、書類が要ります。
公立学校の先生は、教育に関する仕事であれば、本務に支障がないと任命権者が認めた場合に、兼ねることができます(教育公務員特例法第17条)。
この時期に書くもの:
✔ 兼業の許可申請書(様式と基準は自治体ごと)
私が勧めたいのは、学校と直接の関係がない領域で、「仕事にできる」専門性を持つことです。
「仕事にできる」とは、価値を提供して、対価を得るということ。
その第一歩が、情報発信です。
私自身、48歳くらいから発信を始めました。
発信は、信用を積み上げるための最小の単位です。
ただ、許可が要るかどうか、どこまでが「教育に関する」仕事なのかは、勤務先で必ず確かめてください。
ここを飛ばすと、せっかくの一歩が台なしになります。
〇節目6 休む・家族と生きる
育児休業、介護休暇、病気休職。
休むための制度は、思っている以上にそろっています。
この時期に書くもの:
✔ 育児休業・介護休暇などの申請書
✔ 復帰の前の、働き方の相談(書類というより、話し合いの準備)
制度があるのに、休むとキャリアが止まる気がして、言い出せない。
そういう先生は少なくありません。
でも、教師は、実はもっと休める仕事です。
私自身、教員になりたての頃は、年休を1年に3日ほどしか使っていませんでした。
それがその後、年間でほぼ20日、フルに取る年が続くようになりました(笑)。
休む時期を、出産予定日や介護の見通しから逆算して決めておく。
それだけで、職場への切り出し方も、復帰の計画も、ずいぶん楽になります。
〇節目7 定年・転職・退職
最後の節目です。
ここも、制度が大きく変わっています。
地方公務員の定年は、2023年度から2年に1歳ずつ引き上げられ、2031年度に65歳になります。
あわせて、次の仕組みもできました。
✔ 管理職は、原則60歳で管理職から外れる(役職定年)
✔ 60歳を超えると、給料は当分のあいだ7割になる
✔ 60歳を過ぎてから定年の前に退職し、短時間勤務で働き続ける道もある
つまり、「60歳で終わり」という前提が、もう成り立たないということです。
60歳で辞めるのか、65歳まで続けるのか、その途中で別の働き方を選ぶのか。
自分で決めなければいけない時代になりました。
この時期に書くもの:
✔ 退職願(伝える時期は、年度末の退職なら秋から冬が目安)
✔ 職務経歴書(学校の外へ転職する場合)
転職するなら、学級経営や校務分掌を、企業に伝わる言葉に置きかえる作業が要ります。
早めに一度、書いてみることをおススメします。
〇地図を持つ人と、持たない人の書き方
同じ異動希望調書でも、地図を持っているかどうかで、書くことが変わります。
避けたい書き方:
「現任校での勤務が長くなったため、異動を希望します。」
伝わる書き方:
「〇〇年後に〇〇(家庭の事情・取り組みたい分野)を控えており、その前に〇〇の経験を積みたいと考えています。そのため、〇〇の学校での勤務を希望します。」
前の書き方には、あなたの「次」がありません。
読んだ人は、あなたをどこに置けばいいのか分からない。
後ろの書き方は、節目を見通したうえで、今の一歩を伝えています。
書類は、相手に判断の材料を渡すためのものです。
自己申告のシートでも同じです。
避けたい書き方:
「授業力の向上に努める。」
伝わる書き方:
「〇年後に〇〇(主務教諭・学年主任・校種の変更など)を考えている。今年は、その準備として〇〇に取り組む。」
目標は、今年の分だけで書くと、毎年同じ一行になります。
地図の上の「今の位置」から書くと、一行が具体的になるんです。
〇今日からできること
ここまで読んで、全部を一度に考えるのは無理だと思った方。
それで大丈夫です。
今日やることは、ひとつだけ。
自分の年齢と、定年の年齢を書き出して、そのあいだに「異動」「ライフイベント」「やってみたいこと」を、分かる範囲で置いてみる。
それが、あなたのキャリアの地図の、最初の1枚になります。
あとは、節目が近づいたら、その節目の記事を読んでください。
コツコツ続ければ、いいキャリアが積み上がりますよ。
制度の確認:2026年10月
この記事の制度に関する部分は、2026年10月時点の情報です。様式や方針は、勤務先の自治体・学校法人の案内で必ず確かめてください。